2拠点生活エッセイ 第17回「娘をねぎらう」

台風・チャーミーの直撃に注意しながら和歌山県の白浜まで行った。友人の結婚披露パーティーへ参加するためだ。

和歌山までは、夫と娘とともに3人で車に乗り込み、高速道路と下路を使って走ること6時間。
ゲリラ豪雨のような雨の中をワイパーを最速にしてくぐり抜けるのはヒヤヒヤしたが、白浜に着く頃には雨も止んでいた。

宿についてチェックインを済ませ、部屋で荷物をおろしたとき、はじめに出た言葉は娘への「がんばったなぁ〜!ありがとうー!」という、ねぎらいだった。

京都市と福知山市とを週の半々で行き来する2拠点生活には、当たり前ながら移動が欠かせない。
最近はもっぱら車を使っているので、家から家まで片道だいたい3時間かかる。
慣れた大人でもそれなりに疲れるので、生まれて1年10ヶ月の娘は(平気な顔をしているが)おそらくかなり疲れているはず。

だから移動のあとは、そんな感じにねぎらうことが習慣になっている。

娘は、移動中、基本的に寝ているが、起きていたら車窓を楽しんでいることが多い。
チャイルドシートに座って車窓を眺める彼女が「パッシュン!」と叫んだら、その意味は次のどちらかだ。

1つは、アーティストのPerfume(パフューム)のことである。ある時期『FLASH』という曲を昼寝の導入ソングにしていたほど娘にとってお気に入りのグループなのだが、パフュームという単語は発音しにくいようで、ずっと「パッシュン」と呼んでいる。

もう1つは、そのPerfumeの『TOKYO GIRL』という楽曲のプロモーションビデオに出てくる東京タワーのことだ。そこから派生して、塔のようなもの(たとえば京都駅前にある京都タワー、福知山駅の近くにある電波塔、送電線をつなぐ鉄塔、民家の屋根の上にある大きめのアンテナなど)も全てこの単語でまかなわれる。

これまでは「パッシュンあった!」と言われたら、窓の外にPerfumeか塔を探し、見つけ出してから、どちらの意味かを判断して「ほんまや!パッシュンあったなぁ~!」と受け止めていた。

だが、近頃は娘の語彙が増え、二語文(「バナナ ください」「ごはん ないない」のように単語二つで意味を成す文)も使うようになってきたので、「東京タワーや電波塔はパッシュンではなくタワーというのだ」と新たな知識を教えてみることにした。
すると、教えたすぐ後から塔のようなものを見つけたらすんなり「タワー!」と叫ぶようになった。こちらが思うよりも簡単に置換できたようだ。

今回の白浜旅でも、覚えたての「タワー」を次々に見つけた。
雨が強いと窓が曇ってタワーはもちろん景色も見えなくなるけれど、サービスエリアに寄れば車から降りて、タワーの他にも知っている「バシュ(バス)」「くるま」「トラック」があるのでそれを指させる。長靴をはいて歩くうしろ姿を、少し離れて追う。

普段から、どんな場所でも知っているもの・好きなものを見つけようと探求する姿にグッとくることがあるが、今回のように気の落ち着かないときでも、いつもやっていることをやって楽しんで過ごす娘には頼もしさすら感じる。

いつもありがとう、おつかれさま。雨がやんだら、また遊ぼう。

私たちは無事、京都市の自宅にたどり着いて夜を迎えている。
素晴らしいパーティーを開いてくれた友人たちの暮らす街をはじめ、各地での被害が最小限であることを心より祈る。

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吉田美奈子
農家民宿「雲の原っぱ社」宿主。1989年生まれ。福知山市で生まれ育つ。京都女子大学現代社会学部現代社会学科卒業後、NPO法人暮らしづくりネットワーク北芝で地域教育に関わる。2012年、福知山市の雲原地区へ単身移住。2016年、結婚を機に京都市との2拠点生活スタート。同年11月、女児の母となる。クマと星野源と夫が好き。 ツイッター▷@kumonoharappa ホームページ▷雲の原っぱ社

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